眼球には水晶体と言う組織が存在するが、これは外界の光情報を網膜に結像させるものと考えることができる。カメラで言うところのレンズのような..と、反転して形容されるほどに光学的な身体の産物である。
作品「Eye」は食用ブタの眼球内から、その水晶体を取り出し、独自の光学系装置に組み込んでレンズとして機能させ像をうつす。体組織である水晶体は時間と共に変容し、光を取り入れる機関としての能力を失ってゆく。鮮明な像は次第に歪み、見えていた光学像が捉えにくいゲシュタルトへと変容する。 死後の眼球内で網膜に結ばれたであろう、その最中の光の現象を緻密に記録し続ている。
光をとらえてきた構造の死と生の境界性の階調、その「Eye(め)」に映るような情景とはどのようなものだろうか。 主体を失った眼球の組織、機械と肉体のレンズによってもたらされる極性の図像が持続していく。